「お墓が高い」といわれる東京都内でお墓を探した結果、納骨堂を選択する人が増えています。納骨堂は墓石を建てる寺墓地や霊園に比べて価格が安いということはありますが、それ以外にも多くのメリットがあります。
この記事では、納骨堂とはどのようなものかに加え、選ぶ際にチェックすべきポイント、納骨堂の選び方をご紹介いたします。
永代供養は?霊園との違いとは?終活する人が注目する東京の納骨堂
近年、自宅の近くのお参りしやすい場所に納骨したいと希望する人や、終活として納骨する場所を自ら用意したいという人も増えています。そんな人々に選ばれているのが納骨堂です。 納骨堂とは、寺の中に設けられた遺骨を安置できる場所です。参拝口も設けられているので、お墓参りも可能です。 納骨数の単位は、一人から複数人の遺骨を納められ、家族のお墓として使える納骨堂もあります。占有スペースが少ないので多くの方が利用できるのに加え、外のお墓のように墓石を建てる費用が不要なので、東京都内であっても比較的購入しやすい価格のものが多くあります。 納骨堂には、永代供養がついていることが多いので、独身者や子供のいない夫婦など、お墓の後継ぎのいない人に適しています。 納骨堂には、下記のような種類のものがあります。
- 自動搬送式納骨堂
- 個別の参拝口に遺骨が入った箱(厨子)が機械によって自動的に運ばれてくるタイプの納骨堂。複数の骨壺を入れられるものが多く、家族のお墓として利用することが可能です。威徳寺赤坂一ツ木陵苑(東京都港区)や、興安寺大須陵苑(愛知県名古屋市)といった室内納骨堂のように、参拝口に墓石が設置されており、その前でお参りできるものだと、外のお墓との違和感が少ないため、抵抗なく受け入れられています。
- ロッカー式納骨堂
- ロッカーのように区切られ、扉が付いた納骨壇に遺骨を安置するタイプ。納められる骨壺は一つのことが多く、一定期間個人での納骨を希望する人に向いています。
- 仏壇式納骨堂
- 仏壇に納骨室がついており、そこに遺骨を納めます。比較的多くの骨壺を納めることができるので、ご家族やご兄弟で一緒に利用したい方に適しています。
- 位牌式納骨堂
- 位牌の中に遺骨を納めるものです。一つの位牌につき一人分の遺骨を納めます。位牌の中にはすべての遺骨を納められないので、分骨します。
- 合祀式納骨堂
- 骨壺から遺骨を取り出し、他の遺骨と同じ納骨室に納めるタイプの納骨堂。骨壺のまま納骨できるものに比べ費用が安価である一方、いったん納めた遺骨は取り出せません。
これまでのお墓としては、霊園が主でしたが、霊園と納骨堂には以下のような違いがあります。
- 1.屋外と屋内
- 霊園と納骨堂の違いは、遺骨およびお参りする場所に違いがあります。霊園は屋外に墓石があり、地下または地上に設けられたカロートの中に遺骨の入った骨壺を納めます。一方、納骨堂は棚の一角であったり、厨子の中であったりと納骨堂のタイプにより異なりますが、遺骨を納める場所が屋内にあります。そのため、霊園はお参りする際も屋外なのでお参り時の環境は天候に左右される一方で、季節の移り変わりや解放感を感じられます。納骨堂は遺骨も屋内に安置されるので、お参りする場所も屋内です。そのため参拝時に天候に左右されず快適にお参りができるメリットはありますが、施設によっては参拝者が多いと順番待ちをしなければいけないこともあります。
- 2.掃除の要・不要
- 霊園は、参道や管理棟など共有部分は霊園のスタッフが掃除しますが、利用している区画内は掃除をする必要があります。そのため、お墓参りの時には、お花や線香に加え、掃除道具も持参する必要があります(霊園によっては掃除道具も備え付けられている所もあります)。一方、納骨堂は基本的に遺骨が納められているスペースが小さく、共有スペースが大半なので掃除の必要はありません。気軽にお墓参りをしたいという人にとっては、納骨堂の方が良いと言えるでしょう。
- 3.アクセス方法―自動車、それとも公共交通機関・徒歩
- 霊園は、広い土地が必要であることから都心には少なく、郊外にあることが多いです。そのため、公共交通機関でのアクセスはあまり良いとは言えませんが、駐車場が十分に用意されているので、自動車で移動する人にとっては便利です。納骨堂は、寺院の境内に建てられることが多いです。都内においては寺院は町の中に点在しています。駅の近くにあることも多く、公共交通機関でのアクセスが便利です。よって、自動車の運転が自分でできる、またはお参りをしたい時にいつでも自動車を運転してくれる人がいる人は霊園が良いでしょうし、公共交通機関と徒歩で移動することを選ぶ人は納骨堂が向いていると言えるでしょう。
納骨堂選びのポイント(1):立地とアクセスの安全性
▲東京屈指の繁華街である赤坂周辺にも威徳寺赤坂一ツ木陵苑をはじめ、複数の納骨堂がある。
東京都内には、江戸城築城以来城下町として、人口約100万人に至る大都市を形成して以来、多くの寺が集まるようになったこともあり、現在も都区を中心に多くの寺があり、近年それらが本堂改修・改築を経て納骨堂を備えるようになってきています。
都内は公共交通機関が発達しており、かつその駅の近くに位置していることからアクセスの良さを謳う納骨堂も増えています。
しかし、駅からの所要時間は数分であっても、駅から寺までの道のりまでに長い階段があったり、急な坂があったり、交通量が多く安心して移動できない、というケースもままあります。
また、都内は地下鉄も多いのですが、駅によっては出口にエスカレーターがなかったり、エレベーターが出口から遠かったり、バリアフリー対応が十分ではない駅も少なくありません。納骨後にお参りをする人がいる場合は、今は元気でも将来杖をついて歩くことや車椅子を使うことを想定して、安心して移動できる経路が確保できるところを選ぶことをおススメいたします。
納骨堂選びのポイント(2):お参りのしやすさ
屋外の墓地と違い、納骨堂でのお参りは、納骨堂のタイプによりお参りできるスペースが異なります。
たとえば、自動搬送式納骨堂の場合は、参拝口が独立して設けられています。隣接する参拝口の間には仕切りや壁が設けられており、周囲を気にすることなく、落ち着いてお参りすることができます。また、お花やお香、お水が供えられているので手ぶらでお参りができるのも人気のポイントです。
仏壇式の場合も、仏壇の前でお参りしますので、スペース的にはゆとりがあります。仏壇にお供えを置くことも可能です。
一方、ロッカー式や位牌式の場合には、納骨されている場所によっては遺骨の前でお参りできなかったり、参拝する場所にゆとりがなかったりするところもあります。
合祀式納骨堂は、参拝口が設けられていますが、数が限られていますので、お彼岸やお盆のときには、参拝口が混み合う可能性もあります。
頻繁にお参りする、またはお参りをしてくれる人がいたり、大勢でお参りをすることが想定される、など自分たちの場合はどうであるかを想定し、気になる施設を見学することをおススメいたします。
納骨堂選びのポイント(3):供養のための設備の有無
遺骨を納める場所だけではなく、供養をしっかりと行っていきたいと考えているのであれば、そのための設備があるかどうかもポイントです。
たとえば、その納骨堂が宗旨宗派を問わず利用できるのであれば、経営主体と宗派が異なったとしても各種法要を執り行える場所があるかどうか、確認した方が良いでしょう。
また、法要を執り行った後の会食場所が併設されているかどうか、スタッフが食事や返礼品の手配も含めて法事の手伝いをしてくれるかどうかも確認しましょう。
5.納骨堂選びの流れ 資料請求から見学まで
東京都内では、最近の納骨堂人気の高まりを受けて、次々と新しい納骨堂が登場しています。その中から納得のいく一か所を選ぶには、しっかりと選ぶ必要があります。、おススメの納骨堂選びの流れをご紹介いたします。
- 1 情報収集と資料請求
- お墓探しの基本は、情報収集です。これは納骨堂選びでも変わりません。情報源としては、チラシや新聞広告、インターネットが挙げられます。最近は、「いいお墓」「お墓さがし」「OHAKO」といった、霊園や納骨堂の情報を網羅したポータルサイトが多くあるので、それらを利用すると、条件に合う施設はどれぐらいあるのかが分かるので便利です。
その中から、条件にあった施設へ資料請求をします。チラシや新聞広告であれば掲載されている問い合わせ先に電話をすれば、資料を送ってもらえます。なお、ポータルサイトでは、興味のある複数の施設に一括資料請求できる機能が付いているところが多いので、資料請求画面で資料請求をする施設の一覧を確認しておいた方が良いでしょう。 - 2.納骨堂の資料を吟味、見学する施設をリストアップ
- 資料請求をすると、その納骨堂を販売している石材店から資料が届きます。この内容をよく見て、比較検討します。ここで気を付けたいことは、「パンフレットの写真=実物」ではないということ。パンフレットの写真はきれいだったのに、実際に見に行ったら思っていたのと違った…ということはよくあります。パンフレットのデザインや掲載されている写真の雰囲気に惑わされず、自分が求める納骨堂の条件に合致するかどうか、送られてきた資料をよく読むことが大切です。
そのうえで、上記で紹介した納骨堂選びのポイントと、自分自身の条件に合致した施設をリストアップし、実際に見学に行ってみましょう。 - 3.納骨堂の見学
- 納骨堂の中には、予約が必要なところもあります。送られてきた資料に明記されている場合には、その指示に従いましょう。特に指示がなくても、案内を必要とするのであれば事前に連絡を入れておくと安心です。 施設見学にかかる時間は、施設にもよりますが、だいたい1時間はかかると思い、移動時間や食事・休憩の時間も見てゆとりあるスケジュール作りをしましょう。
また、一度見て決めてしまわず、時期を変えて訪問してみると良いでしょう。たとえば、お墓参りの人が多く訪れる時期でも待機や混雑なくお参りができるかどうか確認するために、お彼岸やお盆時期に再度訪問すると良いでしょう。
屋外のお墓よりも安いとはいえ、いつかは自分が納まるところであるとともに、家族が利用するところでもあります。
何度も買い替えられるものではないので、買ってから後悔しないよう、自分は家族と一緒に入りたいのか、それとも独立したお墓に入りたいのか、宗旨宗派が同じお寺のお墓が良いのか等を整理したうえで、想いに合ったお墓・納骨堂を検討するのが良いでしょう。