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実家に帰ると、ほっとするのはなぜだろう ― 思い出の家と、これからのこと

帰省して玄関の戸を開けると、ふわりと漂うわが家の匂い。柱に残る背くらべの傷や、台所から聞こえる包丁の音に、ふっと子どもの頃に戻ったような気持ちになる。実家には、そんな不思議な力があります。

季節が深まり、年末の帰省の予定を考え始める頃かもしれません。今回は、思い出がたくさん詰まった実家とのこれからを、やさしく考えてみたいと思います。

実家のことを考えると、胸がざわつくのはなぜ?

親が年を重ねてきた。実家に帰るたび、少しずつ物が増えたり、手入れが行き届かなくなったりしているのが気になる。いつかこの家をどうするのか、考えなければいけない日が来るのだろうか――。

実家のことを考えると、なんとなく胸がざわつく。それは、実家がただの建物ではないからだと思います。家族で囲んだ食卓、季節ごとの行事、親の背中。実家のこれからを考えることは、そうした時間や、親の老いと向き合うことでもあるのです。

「親はまだ元気なのに、こんなことを考えるのは親不孝だろうか」と、自分を責めてしまう方もいます。けれど、実家のこれからを思うのは、親や家族を大切に思っているからこそ。決して後ろめたいことではありません。

大切な人や住み慣れた場所を失うことで生まれる悲しみを「グリーフ」といいます。実家のこれからを思うときの寂しさも、そのひとつかもしれません。すでに親を見送り、実家を前に立ち止まっている方もいるでしょう。考えがまとまらないのは、それだけ実家を大切に思っている証です。

実家の思い出、どう受け継ぐ?

実家のこれからというと、「残すか、手放すか」という話になりがちです。けれど、その前にできることがあります。それは、家に宿る思い出を、形を変えて受け継いでおくことです。

  • 好きだった部屋や庭、台所の風景を写真に撮っておく
  • 柱の傷や表札など、家の「顔」を記録しておく
  • 思い出の品をひとつだけ、自分の家に持ち帰る

写真は、何でもない日常の風景こそ、あとから宝物になります。玄関の靴箱や、窓から見える景色など、見慣れた場所もぜひ残しておいてください。

親が元気なら、家にまつわる話を聞いてみるのもおすすめです。「この家を建てたのはいつ?」「どの部屋がいちばん好き?」。家の歴史を聞くことは、親の人生そのものを聞くことでもあります。照れくさければ、古いアルバムを一緒に開くだけでも、自然と話が広がります。

家族で話すときは、何から始めればいい?

いきなり「この家、どうする?」と切り出すと、親もきょうだいも身構えてしまうかもしれません。最初は、結論を出す話ではなく、思い出を分かち合う話から始めてみてください。

「この縁側で、よくスイカを食べたね」。そんな何気ない会話から、それぞれが実家に抱いている気持ちが見えてきます。残したい人、迷っている人、手放してもいいと思っている人。気持ちがわかれば、いつか具体的な話をするときも、お互いを思いやりながら進められます。話し合いは、一度で終わらせなくて大丈夫です。お盆、お正月と、帰省のたびに少しずつ話していけばいいのです。

離れて暮らすきょうだいがいる方は、実家で撮った写真を送り合うのもよい方法です。おひとりで実家と向き合っている方は、思い出の品をひとつ手に取って、ゆっくり思いをめぐらせる時間をもってみてください。

親に「まだ早い」と言われたら?

実家の話をしようとすると、「縁起でもない」「まだ早い」と言われることもあるかもしれません。そんなときは、無理に話を進めなくてかまいません。親にとっても、自分の家の行く末を考えるのは、寂しさを伴うことです。「この家、好きなんだよね」と、気持ちだけ伝えておく。それだけでも、親の心に何かが残ります。話は、また次の機会でいいのです。

手続きのことが気になったら?

家の名義や、これからの管理など、手続きのことが気になる方もいるでしょう。けれど、急いで決める必要はありません。気になることがあれば、市区町村の窓口や、司法書士・弁護士などの専門家に相談することができます。ひとりで調べて悩むより、まずは話を聞いてもらうだけでも、気持ちがぐっと楽になるものです。

今日からできる小さな一歩

  • 実家の好きな場所を、一枚写真に撮ってみる
  • 家族に、実家の思い出の写真を送ってみる
  • 親に「この家で、いちばん好きな場所はどこ?」と聞いてみる

どれも、今日すぐにできることばかりです。

受け継ぐのは、家だけではないから

実家を受け継ぐことは、建物を引き継ぐことだけではありません。そこで育まれた家族の時間や、親から受け取ったぬくもりを、次へとつないでいくことでもあります。

家がこの先どうなっても、心の中の実家は、ずっとあなたとともにあります。すでに実家を手放した方も、あの家で過ごした時間は、これからもあなたの一部です。年末の帰省では、いつもより少しだけゆっくり、家の中を見渡してみませんか。きっと、懐かしい何かが、あなたを迎えてくれるはずです。

ニチリョクからのご案内

実家のことや、これからの備えについて、「何から考えればいいのか」「誰に相談すればいいのか」など、気になることがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。

ニチリョク お客様相談室フリーダイヤル 0120-300-100受付時間 9:00〜17:00(年中無休)

執筆者プロフィール

吉原友美(よしはら・ともみ)
終活講師・グリーフケア士。
株式会社ニチリョク 執行役員・終活部長、
一般社団法人ライフ・パートナーズ代表理事。

早くに家族を亡くした自身の経験から、グリーフケアに早くから着目。
大切な人を失った悲しみに寄り添うことの大切さを伝えている。
2011年から、シニア世代を中心に、終活を身近な言葉でわかりやすく伝えてきた。
講演は1,000回以上、参加者は延べ25,000人以上。「相続会議」「婦人公論.jp」をはじめ、その他の媒体でも執筆。

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